〜102話のあらすじ〜
実(みのる)は大好きなくまのプリントの服を捨てられてしまい
不機嫌だった。パパは間違って女の子の服を買ってきてしまう。
パパと外で食事をする約束をして実と拓也は出かけるが、隣の成一に
「何だあ?実、お前その服って女の子用じゃねーの?」とからかわれ、
実はずーっと泣き続ける。店でくまの服を探すが良いのが無く、
イライラした拓也は怒って実の着てる女の子用の服をぬがす。
実「いらにゃい」拓也「じゃあ裸でそこにいれば?ばいばい、実なんか
大っ嫌いだからねっ」と去る。泣きながら追いかける実。
そこに車が来て実をひき、重体で病院に運ばれた所から。
〜最終回 第103話 病院の廊下〜
拓也の回想「ばいばい」「実なんか大っ嫌いだからね」
僕は確かにそう言ったんだ、確かに..言ったんだ..
「実なんか大っ嫌いだからねっ」「大ッ嫌イダカラネッ」
血がいっぱい出てた..痛かっただろーな、いっぱい涙流してた、あれは..
僕が酷い事を言ったからだ...(実、手術中)
パパ「ー拓也..一体どーなってるんだ!?待ち合わせ場所に..警察の人が来て」
拓也「パパぁ」(拓也、パパに抱き着く)
警察の人「御家族の方ですか?」パパ「は..はい」
警察「すいませんこんな時に、警察の者です。事故の状況説明を
したいんですけどよろしいですか?」パパ「はい」
警察「あと..運転してた方はかなり気が動転してるんですけど
ロビーに来ていて..会いたいそーですけど会って頂けますか?」
拓也「僕の..せいだ」パパ「拓也..?」拓也「僕が実を泣かせたから
だから僕を追いかけて来たんだぁ」パパ「拓也っこれは事故なんだよ?」
拓也「それの原因は僕だ!!」パパ「拓也っ!!違うっ拓也っ」
拓也「僕のっ..僕のせいなんだあ..っ」(泣き崩れる拓也)
〜医者とパパ〜
5時間32分 手術に要した時間は長かった
”あの子はまだ闘っているんだよ”後でお医者さんに言われる言葉だ
医者「左腕の骨折と内臓のキズから大量出血が有りました。頭部のキズは
縫い合わせましたが多少の脳内出血が見られまして..ここです。長時間の手術で体力も
落ちています。今昏睡状態に陥っていまして..非常に危険です。
この2、3日が山場ですね..意識が戻らない場合は覚悟しておいて下さい」
パパ「死ぬ..という事ですか..?」医者「...今はなんとも言えません」
〜実を想う拓也 病院〜
なんて沢山の配線がくっついているんだろう..実ごめんね
お兄ちゃん泣きすぎちゃってもう頭が痛いんだなんだかグチャグチャ
しちゃってまともに考えられないんだ..ここにいる僕は本物の僕?
なんか..寒いんだ..夢なんじゃないかな?ホラ指がピクリとも動かないもん。
だってこんな..ドラマみたいな不幸って現実的じゃ無いよ。
それとも現実は不幸と幸せがすぐ隣合わせにあるもんなのかな
(実が現れる)実「にーちゃ」拓也「実..?もう..どこ行ってたんだよ
捜してたんだぞ」実「えへへーにーちゃあしゅきー。だいしゅきー..」(消える)
拓也(夢..?静かだな..今何時だろ..?パパはどこ行ったんだっけ..?
そうだ..着替えとか取りに家に行ったんだ..すぐ戻るって..)
医者(朝日)「君..大丈夫かい?少し眠った方がいいよ。付き添いの方々に
ベッドが用意してあるんだよ?」拓也(誰?優しい声..)
朝日「僕は君の弟さんを担当した救急医師の一人だよ」拓也「眠れないんです..」
朝日「..実君の事は僕達がちゃんと看てるから君も体力を溜めないといけないよ」
拓也「でも..パパを待ってるし..」(手を握る朝日)朝日「不安なんだね?
手がとても冷たい。拓也君、僕を信頼してくれ。君達が頑張らないと
僕達医師や看護婦はとても辛いんだ。いいかい?あの子はまだ闘っているんだよ」
(ネームプレートを見て)拓也「朝日..勇貴先生?」朝日「ああ変わった名字だろ?」
(パパ登場)拓也「パパ..実は今んとこ変化ないよ..」
パパ「まさか..勇貴?勇貴なのか?」朝日「ああ久し振りだなあ、晴美」
拓也「..」朝日「この子があの時の子か。俺達も年をとるはずだな
大きくなって..由加子ちゃんにそっくりだ」拓也「ママを..知ってるの?」
朝日「ああ、君のお父さんとは学生時代からの友達でね..だから赤ん坊だった君も
知っている」 朝日勇貴先生の存在はパパにとても大きな安らぎを与えたのだと..
後で分かった..だってこの時までパパには頼れる人がいなかったんだ
(実の前のパパ)パパ「実..色が白いな、実..パパの声聞こえるか?
元気になったら遊園地に行こうな。だから頑張れよ」
〜お隣の家族がガラスごしに実を見ている〜
智子「ううう..実くーん」成一「ばっ..智子ちゃん何泣いてんだよ!?まだ
どーにかなったわけじゃねーんだぞ!(涙が出る)あ..あれなんで俺まで..」
智子「ううう..体中にいっぱい線がひっついてるう」
成一の母「晴美ちゃんお弁当を作って来たのよ。拓也君と食べて少しでも
体力付けて頂戴」パパ「え..あすいません」成一の父「わしらに出来る事が
あったら何でも言ってくれ」成一の母「お家に誰か来たら対応しとくわね」
成一「晴美ちゃん、拓也、今何してる?」パパ「眠らせてるよ」成一「そっかー..
俺..昨日駅前で拓也と実に会ったんだよなー実..すごい元気だったのに信じらんねーよ
俺のせいで二人その時喧嘩しちゃってさ..悪い事しちゃったと思って..」
パパ「成一..こーゆー状態になると大抵の人が考えるんだ。どーしてあんな事を言ったん
だろうと、もっと色んな事をしてあげたかったと、もっともっと何かを語り合えたはずだと」
〜拓也、病室で寝ている。実の夢を見る〜
実「あのねーみのねーちょこしゅきなのーちゃまごしゅきーおいしーねえ
おいしーねえ..にーちゃあ」(拓也、涙を溜めて目が覚める)
パパ「拓也..?どーした、もう起きちゃったのか?」拓也「だって..実が..実が..」
パパ「大丈夫だ、まだ何も起こって無いよ」拓也「わ..悪い事ばっかり考えちゃうんだ
もし..このまま..実が目を覚まさなかったらどーしようとか..死んじゃったらどーしようとか
実はまだ三歳でもっと楽しい事があったはずなんだ!実に..くまの服買ってあげれば良かった!
いっぱいいっぱい探してあげれば良かった!!」パパ(成一に言ったあの言葉は
自分自身に言った言葉だ。父さん母さん、由加子、めげそうだよ..)
実の意識は二日目になっても戻らなかった。(実の泣き声が聞こえる)
拓也(あれ..?)朝日「そう..大丈夫だよリラックスして。君は少し心を
落ち着かせないといけないんだ」拓也「でも..誰か..泣いて..るよ..」
朝日「気のせいだよ」拓也「気のせい」朝日「ああ」拓也(でも誰かがホラ泣いてる)
〜実が沼にいる(拓也の夢)〜
実(にーちゃあ、にーちゃあ)拓也(実?)実(にーちゃあこあいーにーちゃああー)
拓也(足が進まない、何で?)実(にーちゃあ、いやあっ、こあいのー)
拓也(すぐそこなんだ!お願いだ!行かせて!これを逃したら僕はっ、僕は!!)
実(にーちゃあっ)沼から手が出て実を飲み込む。拓也(実うっ!!)
〜パパと朝日の友情 病院の椅子で〜
朝日「大丈夫か?」パパ「ん?ああ拓也は?」朝日「落ち着かせる為に今鎮静剤を
与えてきたよ。晴美、俺は今休憩時間だ、時間は気にしなくてもいいぞ」パパ「何だ?」
朝日「お前は自分の事となるとニブチンだからな。昔っからそうだ。心の奥に溜めとくより
なんぼかマシだろ、言いたい事が有ったら言えよ。それなりに発破かけてやるぞ」
パパ「はは..情けないな、支える側の親が余計な事を考えている..」
朝日「親だって一己の人間だ。万能な訳無い」パパ「けれど..他人の前では気丈で
いなきゃならない..どこで精神のバランスを取っていいのか分からないんだ」
朝日「今取ればいい」パパ「..なあ..勇貴..運命ってあるんだろーか?
なんでだ!?なんで交通事故なんだ!!由加子の両親は形は違うが飛行機事故で..
俺の両親と由加子は..車で亡くなっている..!!この上実までが..っ
そうなると考えてしまうんだ!今に..俺か拓也までもがなんらかの事故で死を迎える
んじゃないかって!!子供達を失いたくないっ!怖いんだ!怖いんだよっすごく..!!
怖くて怖くてたまらないんだっ!」 朝日「運命か..なるほどね。それは確かに有るかもな
だが俺が信じるのは人間である運命だ。「人間として」の範囲だ、それ以上でも
それ以下でもない。もしお前の言う処の運命が有るのなら人の生死に関わっている医療は
全て運命の流れに抵抗してる事になるな?俺が担当する患者は予期せぬ処から
死に直面せざるを得なかった人達が多い。だけど最後まで望みを捨てはしない。
俺はいつも思っている。生という思いにしがみ付いてくれ。生きたいのなら
最後の最後まで抗ってくれと。運命という字を考えてくれ、命を運んでいるんだぞ
それを誰彼に決定付けて欲しくないね。変えてやるよ、抵抗して抵抗して
抵抗しまくってやる...っと急患だ、俺の言葉忘れんなよ!あ、それとな
親友の子供だからではなく医師として頑張るんだ!」
最後まで生きたいのなら 抗って 抗って 闘って
〜3日目〜
看護婦「先生っ患者さんの容体がっ!!」(バタバタする病院)
三日目、実の容体が悪化した。詳しい事は分からない。僕は集中治療室の外に有る
ソファーに黙って座っていた。目の前を何人かが慌ただしく走っていった。
そんな中で僕は実の顔を思い出そうとした、なのに思い出せない。声も顔も
その仕種さえ思い出せない、その事が悲しくなる。
朝日「心臓マッサージ!」看護婦「心拍数、血圧低下!」朝日(頼む頑張ってくれ!)
誰か..実の顔を思い出させて下さい
〜屋上にいるパパ〜
パパ(実は..まだ三歳で..これからもっと幸せな日々を送るはずだったんだ..)
女性がパパの背中にしがみつく。パパ(!今..確かに..いや..でもまさか...)
階段を降りるパパ「まっ待ってくれ!!由加子っ!」パパの両親が目の前にいる
パパ「父さん..母さん?」パパ(これは夢?俺の願望が幻を見せてるのか?
なんて..父も母も穏やかな顔をしているんだろう..)パパの父が指差す。
パパ(はっきりと示したその道先にあるのは?あるのは..示した先は実の病室?)
看護婦「先生っ呼吸が..!!」
〜医師達が慌てる中、実の意識の中〜
実(どこー、にーちゃあーぱぱー..みの、ひとりやなのー)光が見え、走る実。
その頃、拓也の前にママが現れる。「..也、拓也」拓也(ママ..?)
思い出パパ「拓也、弟の実君ですよー」思い出ママ「拓也、お兄ちゃんになったのよ
可愛がってね..お願いよ..」
再び実の意識。実(ハアハア)拓也(ばいばい、実なんか大っ嫌いだからねっ)
実(ハア..にーちゃあっ!)光に手を出す実。ママの手が実の手を握る。実(みゅ?)
ママ(違うの、こっちじゃないの。大丈夫、一緒にいるから元来た道に戻りましょう)
一方、現実では実の心拍が止まる。朝日「...御家族の方々を..ここへ呼んで..」
ママ(ホラ明るくなってきたわ)
心拍が再び動く。朝日(今、奇跡が..起きた!)
拓也(実、実)ママ(聞こえた?呼んでるわよ、実の事)実(まーま?)
〜手術終了〜
パパ「..也、拓也!!大丈夫か?」拓也「今..ママが..」手術室の扉が開く。
パパ「勇貴..」生きようとする その力は 計り知れず 果てしなく
(実が目を開けている)実「にーちゃあ..ごめ..ちゃ..ごめちゃあ..」
拓也(あ..どうしよう..目の前がボヤけてくる..どうしよう..もう何にも見えない)
拓也「あっうっ、うっく、うわ〜ん..みのるうう!みのるう」パパ「実..」
実「ぱあぱ..」パパ(父さん母さん..由加子..ずっとそばにいてくれた..)
最後まで 生きたいのなら 抗って抗って..闘って 忘れないで
自分の為と そして 待っている人の為に..
〜エピローグ〜
年を越して春。実は幸いにも事故の後遺症は無く元気です。実「う?」
デパートで藤井君と会いました。藤井「あ、榎木なんだ?髪切ったのか。
今日は制服を取りに来たのか?俺?注文なんかしてねーよ。既製服で十分。
なあ、これどーかな、もっと大きい方が良いかも?大丈夫兄貴の短ラン貰う予定。
じゃな、中学でも同じクラスだと良いな」明美姉「ねえ昭広やっぱも少し
大きいのにしなさいよ、あんた絶対でかくなるって」
玉館君が家の前で待っていました。玉館「やー榎木君、今日この制服届いたんだ
僕の立派な姿を見せようと思ってねーいやー中学が別で残念だなー僕私立、君公立」
成一「私立?へー?どこ?」玉館「白泉学園」
成一「なんだ、金出しゃはいれるバカ中学じゃん」玉館「うわああんっ」(去る)
成一「拓也ー聞いてくれよー俺今度チーフになるんだぜー何?実ううっとりすんなって。
あやっぱ凄いって思ってくれる?サンキューサンキュー。
中学進学祝いに今度この名シェフ成一が御馳走作ってやるぜい」
ゴンちゃんと制服姿の見せっこをする約束をしていました(家にて)
ゴン「森口って朱門中学行くんだよなー、すげーよなあ。でも別れるのは淋しいな
藤井なんかあんなんでも案外悲しんでると思うぜ。で?拓也着たか?んじゃいくぞー
いち、にーのさんっ!ぱっ」(隣の部屋から学生服で現れるゴン)
拓也「首元が変な感じする。やっぱまだしっくりこないね」(学生服の拓也)
ゴン「拓也なんかすっげー初々しいな。絶ってー上級生のお姉サマに可愛がられるタイプ」
拓也「ゴンちゃん違和感ないね..」ゴン「うーん悲しい事に俺もそう感じてる」
拓也「実、実どうかな?」実「う?あー..」拓也「ねえ、なんでテレるの」
ゴン「それよりなんでヒロも赤くなるんだ?俺も見ろよ、おい」
〜パパと拓也と実 家〜
パパ「こらあ実うっ!朝から困らせるなよ、頼むから早くこの服着てくれー」
実「やっ!まだ食べゆのっ」パパ「なんで悠長に食べてんだよー!早くしないと
拓也の入学式に遅れるだろー!!」実「ぶー」パパ(くーっ、生意気な目だなー)
(拓也、仏壇に拝んでいる)拓也(もー、朝から騒がしいんだから。
ママ..おじーちゃん..おばーちゃん..今日から中学生になりますっ!よろしく!!)
パパ「拓也ー!実の用意が済んだぞー」拓也「あ、はーい」(玄関へ)
拓也「鞄かー背負うのがないと変なカンジー」パパ「今にランドセル背負ってたのが
不思議に感じてくるさ」(玄関から3人で家の中を見る)拓也「いってきまーす」
実「いてきまーしゅ」(玄関の扉を閉める)拓也「パパっ走らないと遅刻だよー」
パパ「実っパパがだっこしてやる」実「いやーんっ」パパ「いやーんじゃないっ」
(バタバタと去る3人、家の中からの視点)
ママの声「いってらっしゃい」
終わり-戻る