新聞”宿命の対決””力石対矢吹””史上最大の八回戦”
ジョー「行くぜ、おっちゃん」丹下「ああ」
力石とジョー、両陣営ともリングに上がる。
リングアナ「本日のセミファイナル、バンタム級八回戦を行います
赤コーナー、白木ジム所属118ポンド力石徹ー!
青コーナー、丹下ジム所属117ポンド2分の1、矢吹ジョー!」
審判「2人共中央へ、肘打ちローブローバッティングは反則だ
クリンチにホールドは注意をして。ルールに従って2人共フェアにファイト
する様に。分かったね?」にらみ合う両者。
〜第1ラウンド開始!〜
テレビアナ「...果たしてアッパーの力石か、ノーガード戦法のジョーか
リング中央であります。お互いに相手の出方を伺っております
さあ、ジョーはどうするか、ガードをゆっくりと下ろし始めました!
例によって今日もノーガード戦法で有ります!...」
力石、アッパーを出すがジョーはことごとくそれをかわす。
ジョーの反撃は全て当る。ゴングが鳴る。審判「ストップ!ブレイクブレイク」
ジョー「へっ、ざまあ」
丹下(セコンド)「ようやった、なかなか良い線いってるじゃないか」
ジョー「そうかい?」丹下「どうしたんだ、そんな顔して」
ジョー「この試合、俺には分が悪いぜ」
丹下「何、分が悪い?今のラウンドはお前の物でい、弱音をはくんじゃねえ!」
ジョー「弱音じゃねえ、言ってみれば本音ってやつ」ゴングが鳴る
〜第2ラウンド〜
力石、何度もアッパーを出すがかわし客がやじるが段々スレスレになってくる。
丹下「バカ野郎何ボサっとしてやがんだ!とぼけた真似してると命取りになって
しまうぞ」ついにジョーのほほにかする。ジョー(甘く見ちゃいけねえ)
丹下「見ろ西!アッパーが顔面をかすっただけで」西「ああ」
ジョーのほほに切り傷が出来血が出ている。力石が突進、反撃をかわされゴング。
審判「ゴングだ!コーナーへ戻って!コーナーへ」悠然と戻る力石。
丹下「西、血止めだ!早く!」
テレビアナ「第2ラウンド、力石のカミソリオパンチが矢吹のほほを切りました
このラウンド、矢吹、必死のスウェーバックで力石のパンチから逃げきりましたが
この後試合は全く余談を許しません」 ジョー「何か手はねえのかい」
丹下「奴がアッパーを打つには広い空間が必要なんだ。そこで奴の懐へ
飛び込んで左右のフックをつるべ打ちにするんだ。分かるかジョー、
奴が空振りしたらすぐにもぐり込め!」ジョー「タイミングが問題だな」
丹下「大丈夫さ、お前位素早しっこけりゃあの大振りのアッパーを
かいくぐる事位わきゃねえ。」ゴングが鳴る。ジョー「やってみるよおっちゃん..
ありがとよ」丹下「おい..今ジョー何つった」西「ああ..有難う」丹下「あの野郎が
ワシに礼を言うなんて初めてだな..今日のあいつはよっぽどどうかしてるんでい」
〜第3ラウンド〜
力石の大振りアッパー。丹下「今だジョー!」ジョー、力石の懷に入り反撃。
よろけてロープにつかまる力石。葉子「力石君!」
テレビアナ「強烈!これは決まった!矢吹これは鮮やか!スウェーバックの
ポイント作戦からいきなりダメージ作戦に切り替えました」
又力石の懷に潜りパンチを当てるジョー。力石「その手で来るのかい」
力石とジョーが互角に打ち合う。ジョー「くそう」
丹下「バカ、ジョーまともに行くな!止まれ!」何とかパンチをかわすジョー
ジョー(こいつはうかつに接近出来ねえ)力石のパンチがジョーをダウンさせる。
テレビアナ「矢吹ダウン、ダウンです!力石見事なカウンターパンチ!」
審判「ニュートラルコーナーへ!2..3..4..5..6..ファイト!」
だがまた倒される。審判「1..2」ジョー「ええいどきやがれ!」
丹下「馬鹿野郎ジョー立つな!8カウントまで休んでろ!」ゴングが鳴る。
審判「ストーップ!」丹下「このあほんだら、ワシの声が聞こえんのか」
丹下「もう1度あの手を食ってみろ、3ダウンで嫌も応も無く勝負は決まってしまう
んだ!西、また血止めだ!」テレビアナ「第3ラウンド、矢吹はまたもダウンを
喫し、矢吹のコーナーは先程までの元気はどこへやら、すっかり静まり返っています」
アナ2「無理も有りませんな秘密練習をやった戦法が何の役にも立た無いんだからね」
〜第4ラウンド〜
ジョー「こうなったらやけっぱちだ!」丹下「そこだジョー!打ち込め!」
懷でパンチを当てたジョーだが、力石のアッパーをまともに食らいダウンする!
テレビアナ「やったやったやりました!第4ラウンド2分40秒!力石徹得意の
アッパーカット炸裂!」丹下「立て!立つんだ!ジョー!立つんだ!」
審判「1..2..3..4..5..6..7..8..」ロープにしがみつき立つジョー。
審判「大丈夫か、矢吹」無言で立ち力石が来ると同時にゴング。
テレビアナ「立派です、これは凄い力石!アッパースイングを止めたのはゴング前
そのまま打込んでも反則にはなりません、それを力石ゴングと同時にピタリと
下あごと紙一重の所で止めました!もはやわれ勝てりというゆとりのなせる技で
しょうか、実にフェアであります、力石選手!」
丹下「ジョー、さあ水だ」水をバケツに出す。西「何や今の音」
丹下「見ろ、歯が折れている!」西「それも頑丈な奥歯やで、おっちゃん!」
丹下「ええかジョー、一度はゴングで救われた命だ。この後は無かったもんやと
思って1つホンマの拳闘をやってみんか?」ジョー「ホンマの..拳闘?」
丹下「そうさ、ホンマの拳闘、両手ブラリみたいな突飛な戦法は辞めてよ、
ガットリガードを固めてジャブで牽制してストレートなりフックなりを打ち込む
真っ当な攻撃をやってみるんだ分かったのかよ、おい、ジョー!」
〜第5ラウンド〜
ジョー(俺ももうそれしかねえと思っていた所さ)西「今さらガードを固めても通用せんわ
何考えてんねんほんまにもー」丹下「馬鹿野郎それじゃ一体どうすりゃ良いんだよ」
力石のパンチでダウンするジョー。審判「1..2..」丹下「よしガードが効いたんか、
それだけ威力がそがれてる!なにあれなら立てる!ジョーなら立てるわ」
審判「5..6..7..8」よろけて立ち攻撃するがスリップダウンする。
丹下「ジョー!」何とか立ち、ゴング。丹下「おい、しっかりしろ、ジョー!」
〜第6ラウンド〜
テレビアナ「さあ第6ラウンドの開始であります」丹下「ジョー立てるか、立てるか?」
フラフラの攻撃、力石のアッパーに倒れるジョー。客「タオルを投げろ、タオルを」
むやみに攻撃するジョーだが、力石のこめかみにパンチが当る!
葉子「力石君!」力石、ゆっくり倒れ、ロープの反動で頭を強打。
審判「ニュートラルコーナーへ!2..3..4..5..6..7..8..9」立ち上がる力石
力石(大丈夫、やれるさ)テレビアナ「力石、首を激しく振って立ち上がりました!
何だか今妙な倒れ方をしましたね」アナ2「軽い脳震盪を起こしたんでしょう」
ジョー「何て野郎だ、とんでもねえ物騒な事考えやがってよう」
急に両手を下げ顔だけ近付ける力石。ジョー(どうしたんだよ、気持ち悪いな力石
ど、どうするつもりだい..あっそうだ!)ジョーも両手を下げる。
テレビアナ「両者全く動きません!じーっと相手方の出方を待っています!」
〜第7が流れ最終ラウンド〜
審判「どうした2人共!ファイトファイト!打ち合って!ファイト!」
ずっとにらみ合って動かない。観客からヤジが出る。
ジョー(今だ!)ジョーから攻撃、力石、クロスカウンターを出すかかわす。
ジョー(こいつを弾き返して右のダブルクロスで勝負!)だがかわされる。
そこに力石の下からのアッパーが来てジョーは大きく飛ばされる
ジョー(うわあああー..)リングに倒れているジョー。力石(終わった..何もかも..)
審査員「おいレフリー何をしているカウントを取らんかカウントを」
審判「さあニュートラルコーナーに戻って..さあ」審判が押すとよろける力石。
審判「1..2..3..4..5」立ち上がろうとするジョーだがやはり立てず倒れる。
審判「8..9..10!力石!力石、どうした?お前の勝ちだ!さ、力石?」
ロープにしがみつく力石の手をかかげる審判「力石ー!」
丹下「ジョー!おい、ジョー!」倒れているジョーを見てる力石にガウンをかける
葉子(涙ながらに)「やったわね、力石君..これで、これでもう良いのよ」
白木会長「おめでとう力石君、ついに宿願を果たしたな」報道陣に囲まれる。
ジョーが立つ。医者「おい!じっとしていなさい!動いてはいかんよ君」
ジョーに肘で腹を殴られる医者。ヨロヨロと力石に近付くジョー。
笑顔になって「参ったぜ、力石」力石「ん?」ジョー「あそこでとどめの
アッパーで来るとはな、さすがに力石だ」手を出すジョー。笑顔の力石と葉子。
手を出す力石だが、その手は交差せずにそのままリングに倒れる力石。
葉子「り、力石君!」記者「おいドクター今度はこっちだ!こっちが倒れたぜ」
〜ジョーの控え室に記者が入って来る〜
丹下「何だいあんた達は?部屋間違えたんじゃ無いのか?敗者には何も
くれてやるな、それがこの世界の掟だ!さあ勝った力石の部屋はあっちだ!
出てってくれ!」記者「力石が..」丹下「どうしたんだよ?」
記者「それが..その力石が..死んだ」驚くジョー。丹下「り、力石が死んだ」
記者「たった今。第6ラウンド、矢吹が放ったテンプルへのフック。
その時ダウンした際に後頭部を強打した為の脳内出血。1度も意識を
回復しないまま..」力石の部屋に入っていくジョー。
力石の顔の布を取ると穏やかに眠っている。呆然とするジョー。
ジョー「くっ..馬鹿野郎..うわああああー(叫ぶ)!!!」
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