第1話「エスパーはだれ?」の巻
中学。「さよならあ」「じゃあね」「ばいばい」
女友達「ちょっと魔美ちゃん、コーラスのれんしゅうしていかない?」
魔美「わるいけど、きょうはいそぐの」
男友達「ちょっとうちへよってかない?ベートーベンの第九を買ったんだ」
魔美「きょうはいそいでるの」
外へ出るとふと校舎裏が気になる魔美。
魔美「今日は急いでるのに、こっちの方をのぞいてみようという気になったのは..
なぜかしら?」クラスメートの高畑君が不良3人にからまれている。
「なあ、いいだろう!」「たのむよ、高畑君よ!」
高畑「しかし..中学校のボクシング部なんてあまり聞かないなあ」
不良「だからこそ値うちがあるんじゃないか!」
「今から設立準備をしといてさ」「来年の新学期に部員を集めるんだ」
「初代の部長を引き受けてくれよ」
高畑「光栄だけどがらじゃないなあ。君らでやってくれ」
「まあまあ、つれない事いうなよ」引き止める不良。
「実は、体育のカオジョーダンにもちかけてみたんだよ」
「そしたら、お前らがやるんならケンカ部だろうなんていわれちゃって」
「そこへいくと、高畑君なんか先生に信用があるからさ!」
言い争いをかげから見る魔美「しつっこい人達ね、高畑さんも
振り切って帰っちゃえばいいんだわ」
高畑「なぐりっこには興味がないんだ」と去ろうとする。
怒る不良「やい、まてっ!これだけ頭をさげさせといてただで帰れると
思うのか!」高畑のお腹を殴る不良。
高畑「な、何するんだよっ!」
不良「へーえ説明されないと分かんねえのか。お前を殴るってんだよ!
ボクシングのトレーニングだ」ボコボコにされる高畑
魔美「大勢でよってたかって..卑怯だわ!あっ、あっ..
高畑さんてけんかはさっぱりなのね。見ちゃいられない。
(顔をそむけて手を向ける)さっさと逃げちゃえばいいのに」
シーンとする。魔美、目を開けて「?」
不良「ば、ばかな!人間が消えるなんて、そんな..」
「だ、だって皆見たろ!目の前でパッと..」
魔美「消えた?高畑さんが?」
不良「逃がしたんだよ、お前らがドジだから!追えっ!!」去る。
魔美、木の上にいる高畑に気が付く。
高畑「わかんないんだよ。逃げよう!と思ったとたんに木の上にいた」
魔美「まあ、すごい早わざ、やるじゃない!(高畑の腕を叩く)」
高畑「いてて..」「かなりやられたみたいね」
帰り道。魔美「あたし今日は急いで帰らなくちゃいけないの。
すっかり寝坊しちゃってさ、大あわてで学校へとんでったもんだから
コンポコにご飯あげるの忘れちゃって..コンポコって子犬の名前よ。
聞いてんの?さっさと歩きなさいよ!」
高畑「ごめん、考えごとしてたもんで」
魔美「早く帰ってやらないとかわいそうでしょ、コンポコが」
高畑「おれ、関係ないとおもうけどな...」
魔美の家。高畑「ここ?」魔美「よってかない?
顔をあらってキズ薬くらいつけてくといいわ」家の扉を開ける。
魔美「ただいまコンポコ」コンポコ「フャンフャン」
魔美「ごめんねコンポコ、おなかがすいたでしょ」
高畑「これのこと?犬って..どう見てもキツネかタヌキだけど」
高畑をかじるコンポコ。魔美「だめっ!コンポコ。
ゆるしてやってね。コンポコはあれでなかなか自尊心が強いの」
魔美の部屋。魔美「待ってて、お薬もってくるから」しばらく高畑1人で待つ
魔美が帰ってくる。高畑「ずいぶん絵がかざってあるね」
魔美「父が画家ですので。あまり絵は売れないけど。(傷の手あてをしながら)
でも、売れないのはパパが悪いんじゃ無いのよ。悪いのはパパの芸術を
認めようとしない世間のほうだわ。パパよりもずっとへたな人が
一流だなんてもてはやされて..あたしもうくやしくってくやしくって」
高畑「いたた!!」魔美「あら、ごめんなさい!」
立ち上がった高畑は本棚にぶつかり、本棚の上のカンバスが落ちてくる
魔美「あぶないっ!高畑さん!!」
本棚の上にいる高畑。コンポコ「フャン!!」
魔美「どうしてそんなとこへ..」
高畑「それが..ぼくにもさっぱり..そうか!やっぱりそうなんだ!
じつはずうっと考えてたんだ。木の上へ飛び上がった時から。
まさかと思ったけど二度もかさなるとそうとしか考えられない!!」
魔美「?ちっとも分かんない」
高畑「あのね..いや、やめとこう」「話しかけでやめるなんてずるいよ!」
「笑われるのいやだから」「絶対に笑わない!聞かせてよ!」
ひそひそ話で伝える。
魔美「テレ..なんですって?」
高畑「テレポーテーション!瞬間的に物体を移動させる力の事だよ。
超能力の一種なんだけど、どうも僕にはそんな力が潜んでいて
とっさの場合にあらわれたんじゃないかと...」
魔美(笑いをこらえながら)「いえ、笑わないわよ」
コンポコは大笑い。魔美「気にしないで。コンポコは笑いじょうごなの」
高畑「じゃあ聞くけどさ、僕が二度もあんな高い所へ飛び上がった事に
ついて合理的な説明が出来る?」魔美「そういえば、高畑さんて
小さなドブを飛び損なってはまっちゃうような人だから」
高畑「僕はもともと超常現象には興味あってずいぶん本も読んでるんだ
テレパシー、テレキネシス、透視、遠視、未来の予知..科学者が調べて
解明出来なかった実例は無数にある.....」
魔美「ありそうな事に思えてきたわ。実験してみたらどう?」
高畑「そうか!それではっきりする!」
魔美「カンバスを元通りにしてみせてよ、そのテレションで」
高畑「テレポーテーション!音をたてないで。精神を集中しなくちゃ
ならないから。頭の中はただ1つの事だけしか考えちゃいけない!
カンバスが..一瞬で..本棚の上にもどる!」
魔美「...ピクリとも動かないわね」
高畑「あーーっしゃべるなってのに!気持ちが乱れるんだ!」
魔美「すみません」「まとを1つに絞ってやってみよう。
一番小さなカンバスを..」魔美のヌード絵を見つける。
魔美「どうしたの?」高畑「これ..君に似てる」
魔美「あ、それ、モデルはあたしよ」
高畑「モデル!?きみが!?というとつまりその..ヌードで?」
魔美「たまにね。おこづかいかせぎに」
高畑「と、いうことは..ようするに..何もきないで?」
魔美「いやにこだわるのね。それより実験を続けましょうよ
さ、精神を集中して」全然集中出来ない高畑。パパが帰って来る
パパ「お客さん?」魔美「お帰りなさい!高畑さんよ」
パパ「娘がお世話になってます」高畑「いえ..はじめまして..どうも」
魔美「帰るの?どうしても精神集中出来ない?残念ね
面白いとこだったのに」「家でやるよ。頭をよく冷やして」
魔美「成功したら教えてね!」「ああ」去る高畑。
家。パパが歌っている。「オンチ」と魔美。パパの部屋に入って
魔美「忙しそうね」パパ「個展の準備だよ」魔美「夕食に何か御注文は」
パパ「特にないね。人間の食える物でさえあれば、それ以上期待しない」
魔美「まあ、ブジョク!」
外、買い物帰り。魔美「ねえコンポコ、高畑さんの超能力をどう思う?
あたし、今だに信じきれないんだけど。でも、もし..もし、本当に
そんな力があったら、素敵だなあと思うわ」
声が聞こえる。(やろうよ!つじなぐり!)
魔美「誰かしゃべったのよ!すぐ耳もとで」
声(つじぎりって知ってるだろ。ほら、侍がさ。あれみたいに)
(おもしろそうだな!やるか!)
(俺達のトレーニングにもなるしよ!それに...)
魔美「確かに聞こえるのよ!そのへん探してみて、だれかいないか..
きみが悪い..」ダッシュで家に駆け込むとママにぶつかりそうになる!
魔美「ワ!あぶな...い」パパの上にテレポート。魔美「???」
パパ「おい、重いよ、降りてくれ」ママ「どうしたのよマミちゃん?」
魔美「見た?今の!ママにぶつかりそうになったのよ!そしたら一瞬で」
パパ「早わざだね」ママ「でもパパにぶつかっちゃ何もならないわ」
食事中。魔美(あれは早技なんてもんじゃないわ!ひょっとして..
超能力は高畑さんじゃなくあたしのほう..)
部屋。魔美「エンピツよ動け!動いて一人で宿題をやれ!
やれ!やってえお願い!」
学校。ボコボコの男子生徒「夕べやられたんだ。つじなぐりと名のる
覆面の三人組に」「俺もおととい殴られた」「毎晩何人かやられてる
らしいわよ」「ぶっそうな世の中だなあ」
不良「だから前から、俺達が言ってるだろ。ボクシングを習っとけば
そんな目にあわねえんだ。諸君!ボクシング部設立の運動を
起こそうではないか!」話の輪から抜け出す高畑。
魔美「高畑さん!その後超能力開発の進み具合はどう?」
高畑「エンピツを使って実験を繰り返してるんだけどね。
一ぺんだけ5ミリほど動いた」魔美「すごい!!」
高畑「でもその時、地震があったからな。」ガッカリする魔美
高畑「あと、可能性が残ってるとすれば..自分をギリギリの状況に
置いてみるしかないな」魔美「どういう事?」
高畑「自分が、または他の誰かが危ないという..そんなせっぱつまった時
じゃないと、能力はあらわれないのかも...」何かを考える高畑。
魔美「よしてっ!!あんな乱暴な人たちを相手に!」
高畑「何だよ、僕が何か言った?」
魔美「え?何も..あ、そうか。あたし何を考えてたのかしら?」
夜、魔美の部屋。突然魔美が寝床から起きる。
魔美「にわかに起こる胸さわぎ..」コンポコ「フャン!」
魔美「どこへいくのかって?わかんない..でも行かずにいられないの」
外、草むら。高畑がつじなぐり3人組に殴られている。
不良「フン!笑わせるぜ!こんなヘナチョコが俺達に挑戦するなんて」
高畑「おかしい..こんなにいためつけられてるのに超能力が..」けられる。
不良「そろそろまいったか!仲間になって俺の命令に従うなら許してやるぜ」
高畑「だれが..」 魔美が遠くから見ている。
魔美「やっぱり!悪い予感があたっちゃったわ!!」
ボロボロで立ち上がる高畑。不良「こいつ、まだやる気だぜ!」
「しぶといなあ!」「とどめのパンチをくらわせろ!チョエー!」
3方向から高畑に突進する不良達!とっさに魔美が手を上げる!
高畑は高い木に移動し3人はそれぞれのパンチを食らって自滅。
魔美「高畑君を助け下ろすのはやめとこう。あんまり女の子に
見られたくない格好だろうと思うから。
もう、間違い無いわ。あたしはエスパー。ひょっとして
まだまだ隠された力が有るのかもしれない。
そらおそろしいような楽しみのような..複雑な気持ち...」
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