はじめの一歩(TV1話)
釣り船屋「幕の内」の1人息子、幕の内一歩が早朝、荷物運び
しながら登場。「あ、母さんこれは僕がやるからお客さんの方やっててよ」
母「そうかい、じゃあ頼むね。どうもすいませんすぐに用意しますから」
客「船分かりますし私達だけで行ってますよ」「そうですか、すみません」
荷物を用意し、出かける母。「じゃあそれ頼むよ」「うん」
重い荷物を背中にしょって船まで行く一歩、出航の手伝いをして
「行ってらっしゃーい」と手をふり、シャツで汗をふく。

(タイトル)Round1「The First Step」

高校2-Bの教室、放課後。周りで生徒が話している。
男1「なあ、これから映画でも見に行かねえか?良いのやってんだ」
男2「乗りイ!」女1「ハーイ!私も見たーい!」
男1「分かった、愛川ともりみつ、あと誰だ?」女2「私も」
男1「OK!あと1人、誰でも良いんだけど..」
カバンを片付けている一歩。女1「ねえ、幕の内君も行こうよ」
一歩「えっ?ぼ、僕も行っていいの?」
男1「遠慮すんなよ。クラス替えしたばっかで皆よく知らねえ同士
なんだからさ」一歩「そっかぁ、じゃあ..あ(今日夜釣りの仕事
入ってたんだ)」女1「どうしたの?」「え..あ、ゴメン。
うち、釣り船屋やってて母さん一人だから今夜も手伝わなくちゃ」
女1「そ、残念ね」「ま、また誘ってよ」女2「愛川さーん早く行こう」
女1「ハーイ」教室に一歩一人になるが廊下の会話が聞こえる。
「アイツこの間も断ったんだぜ」「シラけるよな」
「そういえばこの間ガラの悪い人達にからまれてたみたい」
「いじめられやすいタイプじゃねえの」笑い声を上げ去っていく。

土手、寂しく帰る一歩(せっかく誘ってもらったのに..
どうして僕ってこう用量悪いのかな..もっと積極的にしないと
駄目なのかな..でも家の仕事放っておくなんて絶対出来ないしな)
「おーい、一歩!」振り向くとガラの悪い3人組が近付いて来た。
「ヨウヨウ」「あっ梅沢君..ア、アハ、どうぞ」道をあける一歩。
梅沢「あ?何か臭くねえか」不良「あーそうっスね、匂いますね」
一歩「えっ?何だろ」突然キックで土手から落とされる。
梅沢「てめえがミミズ臭えんだよ!」橋下でからむ。梅沢「分かん
ねえのか?毎日ミミズいじくってっから体に染み付いてんだよ!」
一歩「ス、スミマセン。でもうちの商売道具だから..仕方無いですよ」
梅沢「ウンザリするんだよ!てめぇが来ると学校中ミミズ臭くなる
からよ」一歩「ミミズじゃなくてイソメなんだけどな..」
怒る梅沢は一歩を殴り出す!「偉そうに文句たれてんじゃねえぞコラ」
一歩(何で殴るの..梅沢君..弱い者いじめして..楽しいの?)

そこにロードワーク中の鷹村が通りかかった。
血を流す一歩。梅沢「ヘッ息子がこんだけ臭えって事はてめえのお袋も
さぞかし匂うんだろうな」にらむ一歩。「アン?何だその目は?ンー?」
一歩「ハハ..いやあ」「チッたまには根性見せてみろってんだよ!!」
蹴り飛ばされた一歩をキャッチする鷹村。
鷹村「アーア、ひでえなこりゃ。強そうに見えねえんだけどな
こんな奴ら」梅沢「何だ?お前は」「イキがるんじゃねえよ馬鹿」「何」
一歩を橋の横に降ろす鷹村。梅沢「イキがってんのはどっちだコラ!」
不良3人の攻撃を簡単にかわす鷹村「扇風機か、オノレら」
梅沢「す、少し位すばしっこいからって良い気になっ..!」
不良3人の制服のボタンが無い。鷹村が手を開き、ボタンを落とす。
鷹村「イキがってんのは俺か?てめーらか?」
梅沢「お、覚えてやがれー!」去る不良達。
一歩「す、凄い(気絶)」鷹村「おいこら起きろ!起きろってばオイ」

気絶した一歩はサンドバックをたたく音で目が覚める。練習風景に
驚く一歩。練習生「ア、先輩!気が付きましたよ!」
サンドバックをたたく鷹村「ん?オイ、大丈夫か?」
一歩「え?はい。ここは?」鷹村「初めてか?ボクシングジムは」
「ボクシングジム?」「ああ、ここなら治療機具が揃ってるからよ」
「あ..有難うございました!ホントにホントに有難うございました!」
「フン..もういいよ。気が付いたんならとっとと帰んな」「え」
「俺は弱い者いじめする奴は大っ嫌いだがな..やられっぱなしで
だんまり決めこむ奴にもむしずが走るんだよ!」「あ..」
梅沢の言葉(てめえのお袋もさぞかし匂うんだろうな)を思い出し
泣きすすりながら「お邪魔しました..」と去ろうとする一歩。
鷹村「ムウ..ちょっと待て!ったく、泣く程悔しいんなら..待ってろ
面白い事やらしてやっから」梅沢の似顔絵を描いてサンドバックに貼る
鷹村「よーし!これをアイツらだと思ってぶん殴ってみろ!」
一歩「え?似て無..」殴られる。鷹村「つべこべ言わねーでやってみろ
スカっとするからよ」「ハ、ハイ!それじゃ..えっとこんな感じかな..えい」
軽いパンチに股蹴りする鷹村「くやしかったら思い切り行け!思いきり」
「ハイ!」練習生「何怒鳴ってんですか先輩」鷹村「うるせえ何でもねえ」
一歩「う〜ん、思いっきり、思いっきり..えい!」少し強いパンチ。
鷹村「おっそれだよ!その気合いだよ!ホレ痛そうな顔になってきたろ」
サンドバックに貼られた似顔絵がクシャクシャになっている

一歩(ヘヘヘ)鷹村「もっと踏み込みを強くしてみろ!」「踏み込みですか」
「踏み込んだ瞬間、腰をグイっと入れる。肩も内側にひねり込む様にだ」
「ハ、ハイ!踏み込み、腰、肩!ようし..フンッ!」
似顔絵は破れ、サンドバックが空中に浮き上がる!(えっ?)
驚く鷹村と練習生。一歩「気持ち良い〜!!言われた通りにやったら
ホラ、こーんなに跳ね上がっちゃって!見た?ねえ見てました?
ホントスカっとしますね!気分爽快って感じですよ!あ痛」
鷹村に手をつかまれると手が血だらけ。「こっち来い!」「あ痛..え?」
練習生1「見たか?あいつの手。皮がズルむけてたぞ」
練習生2「ハードパンチャー特有の?まさか、アイツが?」

包帯を巻いてもらっている一歩「サンドバックって堅いんですね」
鷹村「よしと。んー」一歩の体中を触る鷹村。驚く一歩
一歩「な、何ですかソレは!?」「お前、見た目の割に良い肉の
付き方してんじゃないか。何かスポーツやってんのか?」
「いやあ..家の手伝いが忙しくてクラブとかやった事無いんですよ
家が釣り船屋だから朝も早いですし..」「ハーン..何にしろ
思ったよりパンチのセンスは有るみてえだな、試しに今度あいつら
ブン殴ってみろよ!」「と、とんでも無い!そんな事したら逆に
コテンパンですよ」「やってみなきゃ分からんだろが!さっきの
お前のパンチ食らったら普通の奴はまず立ってらんねーぞ?」
「そんな..殴り合いなんか一度もした事無いし..それにさっきみたいに
いつもいじめられっぱなしだし」「..何もしなきゃいつまで経っても
今のままだぞ」「え」「お前それでいいのか?」「いや良い訳じゃ」
「..フン、時間だ、それじゃな」「え?どこへ」
「ロードワークだよロードワーク」去ろうとするがビデオを取り出す
一歩「世界タイトルKO集?」
鷹村「見てみな。ちっとはスッキリするぜ!返すのはいつでも良いからよ」

夜、自宅。母「それでは皆さん、船の方まで御案内します」
一歩「ただいま!遅くなってゴメン」「ああお帰り..あれどうしたの?
そんなに怪我して」「えっいや」「あんた家の手伝いばっかりしてるから
友達出来なくていじめられてやしないかい?」「そ、そんな事無いよ!
すぐ手伝うね」客「オイオイ、氷が入ってるのにそんなに持つのかい」
フンッと6コほどのアイスボックスを持ち上げる一歩。
一歩「さっ皆さんこちらです!..足下気を付けて下さい。揺れますよ
今日の潮は良いと聞いてます、大漁ですよ、きっと!」
母とすれちがう。母「いつも手伝わせてごめんね」「え?」
「でもあんたはまだ高校生なんだから家の事は母さんに任せて
自分の好きな事やってて良いんだからね?」「う、うん..」
船を見送る一歩「行ってらっしゃーい!」
(ゴメン、謝らなくちゃならないのは僕の方だよ)梅沢の言葉を思い出す
(僕がもっと強ければ..)「あ」急いで家に戻りビデオを見る。

「栄光の男達世界チャンピオン列伝、衝撃のKO集」を見始める。
最初は痛そうで驚く一歩だが、だんだん夢中になる。
(こんなに..こんなに強いって..こんなに強いってどんな気持ちだろう?)

翌朝。「んー!遅刻遅刻!」ふとコンビニでボクシングの本を見かける
授業中、こっそり本を見る一歩。途中、鷹村の記事を見つける。
先生「幕の内、幕の内!」「ハ、ハイッ!」ボクシングの本を持ったまま
立ち上がり皆に笑われてしまう。家でもボクシングのビデオを見る。

教室。男1「ローキック、ローキック」男2「ドラゴンスクエアー!」
男1「あ痛た、ドラゴンは危ないって」男2「んじゃ四の字に行きたい
所をヘッドロックで」女1「まーた格闘技だか何だかやってるー」
女2「私嫌いだなー男ってさあ、何であんな汗臭いの好きなんだろ」
女3「ボクシングとか何か暗そうだしね」女2「言えてる言えてる」
一歩「ボ、ボクシングを馬鹿にしちゃいけないよ!」女性達「はあ?」
一歩「あ、いや思わず..ハハ」学校帰り、何かを考えて走る一歩。

早朝。鷹村がロードワークで橋の有る土手までやって来た。
一歩「あの、お早うございます」鷹村「ん?おーお前かビデオ見たか」
「見ました!何度も巻き直して。有難うございました、鷹村さん」
「?なーんで俺の名前知ってんだ?」「ヘヘ..これ」
ボクシング雑誌の鷹村の記事のページを開く。
一歩「凄いんですね!プロの新人王だなんて。どうりで強い筈だよな
カッチョエ〜」鷹村「ヘン!俺様がカッチョエエのは当たり前だがな
サインなら後だ、ジムに来たら書いてやるよ」去ろうとする鷹村。
一歩「僕にも出来ないかなあ、ボクシング」立ち止まる鷹村「ん?」
「ぼ、僕もボクシングやってみたいなぁ」「あ?」
「いや、僕もボクサーになってみたいなと思って」
鷹村「ハハハ!お前みたいな軟弱な奴にボクサーは向かねーよ。
そうだなあ、何だったらダイエットとかの奴だったら紹介してやっても
良いぜ、どうだ?」「え、あのそういうのじゃ無いんです」「あ?」
「プロボクサーになりたいんです。強くなって試合とかしてみたいんです
鷹村さんもセンスあるって言ってくれたし」鷹村、怒り胸ぐらをつかむ
鷹村「ナメんじゃねえぞ」「え?」「簡単な思い付きでプロボクサーに
なろうなんて言われちゃ困るんだよ!」「思い付きじゃ無いです!
真剣に考えて」「おめーみたいにいつもコテンパンに
いじめられてる奴に勤まる程、甘い世界じゃねえんだ!」突き放す鷹村

一歩「し、真剣に考えたんです。本気でボクシングやろうって..
決心したんです!僕も強くなりたい!鷹村さんみたいに!
生まれ変わりたいんです!(うつむき涙をうかべる)
鷹村さん..強いって何なんですか?強いってどんな気持ちなんですか?」
本気の涙が鷹村の心を動かす。鷹村「分かったよ」「!あ」「来い」

大きな樹の下に立つ。鷹村「俺様みたいになりたいだと?よく見てろ」
樹をキックし葉が落ちる。真剣な鷹村の表情。素早いジャブをくり出す
一歩「え..え?」鷹村「こっち来な」その両手には葉が沢山乗っていた。
一歩「あああ!」「これをやってみな」「え?ぼ、僕が?」
鷹村「これが出来たらボクシングを教えてやるよ」葉を渡す
一歩「ぼ、僕がこんな事を..?」

2話予告:ジャブ、ボクサーが最初に習い身に付けなければならない
ボクシングの基本。距離を計り、風となり攻撃の糸口となる。
早く、鋭く!諦めない、諦めないぞ!僕はつかんでみせる!
絶対に生まれ変わるんだ! 次回「努力の成果」

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