〜第79話「燃えろ遠く輝やける明日よ!」〜
後楽園ホールでジョー対カーロス戦が行われている。
ロバート(=カーロスのセコンド)(やるなジョー素晴らしい男だよ君は)
ジョー(俺ははっきりと自分に向かって言う事が出来るぜ、俺は今精一杯燃えている)
アナウンサー「カーロスリベラ対矢吹丈、第1ラウンドからのすさまじい
ダウンの奪い合いはここ後楽園ホールを埋め尽くした観客を興奮のるつぼに
叩き込んでおります!ただ今画面でお送りしておりますのは第1ラウンド終了間際
矢吹がロープ際で見せた壮絶なボディブローです。凄いですね石田さん」
解説者「いや全く驚きましたな。矢吹がこの様な作戦を考えていたとは。
まとにかくこの一撃で形勢は五分五分。全く余談を許さなくなってしまいました」
ドヤ街の子供「フレーフレー矢吹!」
丹下「いいかジョーカーロスはさっきのダウンが効いているハスだ思い切りいけ!」
ロバート「カーロス、ロープ際に気を付けろ、ロープ際に!」「ファイト!」
〜第2ラウンド〜
アナ「さあどう出ますかカーロスそして矢吹!両者全く真剣な表情」
最初はお互いよけるが段々お互いにパンチが当る。
アナ「息もつかせぬ壮絶な打ち合い!両者見事な接近戦を展開致しました!
打ち疲れたのか互いに荒い呼吸を整え..あっ矢吹出ました!カーロスステップ!
これは大振り!大きくバランスを崩した!カーロスチャンス!」
ロープ際で待つジョーと襲いかかろうとするカーロス。
ロバート「カーロス、ワナだ!矢吹は1ラウンドの再現を狙ってるんだ!」
アナ「なる程わざとバランスを崩しカーロスをロープ際に誘う!驚きました
矢吹の思いきった頭脳プレーです!カーロスリベラ間一髪危機を逃れました」
ジョー「へへ、そう怖い顔するなって。バレて元々、柳の下にどじょうは2匹
いなかったって事になるな、やい!ヘヘ..ん?(ジョーの行く手を遮るカーロス)」
カーロス「せっかく仕掛けたワナだ、最後までやったらどうだ?え、ジョー」
ジョー「何だとまたボロ雑巾の様になりてえってのかい、カーロス?」
カーロス「さあ、どうかな?」 ロバート「カーロス!ノー!」
カーロスが襲いかかり、ロープをつかんでアッパー。リング外へ倒れるジョー。
丹下「ジョー!」レフェリー「ダウンだ!ニュートラルコーナーに戻って!
1、2、3、4」ジョー「やるじゃねえか..だんなよ」「7、8、9」
ジョー「やいレフェリーさっさと試合を再開しろい、試合を!」
レフェリー「は、はいただ今。ファイト!」すぐゴングが鳴り2ラウンド終了
倒れそうになるジョーをカーロスが支える。
カーロス「矢吹しっかりしろ、勝負はこれからだ。そんなにあせるなよ。それに..」
何か耳打ちする。驚くジョー。丹下「ジョー大丈夫か?」ジョー「へへ」
丹下「ジョーどうしたんだ、何がそんなにおかしい?」
西「おっちゃんひょっとしたらジョーの奴リングから落ちた時に..」
ジョー「馬鹿やろう何言ってやがんだい!今な、カーロスが俺に何を言ったと思う
ロープ際や肘打ちだの細かい小細工はもうアキアキだとよ。つまりこの俺と
小細工無しの大きな勝負をやろうってぬかしやがった。全く俺は惚れ直しちまったぜ」
〜第3ラウンド〜
アナ「あ、相打ちです!両者ゴングと同時に相打ちになりました!」
さらにパンチを当てあう2人。
アナ「これは驚きました!2人共リング中央に足を止めあい相手のパンチをよける事もせず
互いに満身の力を込め、互いに相手の力を試す様に、互いに自分の力を試す様に
カーロスも、矢吹も、互いに、互いに..」
〜CM後 ゴングが鳴っても打ち合う2人〜
レフェリー「ストップ!」葉子が安心して額の汗を拭くがハンカチを落とす。
打ち合いが続く。驚く観客や丹下。レフェリー「二人共やめんか」
ロバート「カーロス!ゴングはもう鳴ったんだぞ!」
丹下「ジョー!おめえは死にてえのか!」観客「止めろー!」
ジョー(おいカーロス、何だか騒々しくなってきやがったな、へへ)
カーロス(何気にするなジョー、俺達の闘いにゴングなんていらないハズだぜ)
ジョー(分かってるじゃねえかカーロス、へへ)
カーロス(やるなジョー、ふふ、ふふふ)2人で笑いながら打ち合う。
泣く葉子(これはもうボクシングでは無いわ、ボクシングなどというちっぽけな
世界をはるかに超えてしまっている、確かに超えてしまっているわ。
そしてもっと大きな何かに..)満足気に見守るロバートと丹下。
笑いながら2人共倒れる。喜んで駆け寄る観客。
客「誰が何と言おうとお前達こそ本当の世界チャンピオンだ!」
客「そうだ!四角いジャングルの王者だ!」客「よくやったぞ矢吹丈!
よくやったぜカーロス!」喜ぶ観客達。泣いている葉子。
〜試合後の後楽園ホール、白木葉子が力石の写真入りペンダントを見ている〜
葉子(今日の試合見せたかったわ、力石君。あなたがかつて全てを賭けた男
矢吹丈はやはり素晴らしい本物だったわ) ジョー「力石かい?」葉子「え?」
ジョー「力石か..あいつ今頃地獄の底でえんま様にゴネてんじゃねえかな」葉子「え」
ジョー「俺もカーロスと一戦交えてみてえとか何とか言ってよ。」葉子「まあ(笑)」
2人で笑う。涙をふいて力石のペンダントを閉じる葉子。
サチ(女の子)「あっいたいた。ねえちょっと見てよ、控え室からいつの間にかいなく
なったと思ったらあんな所でデレデレしちゃってさ、ちょっとジョー!あぐ」
丹下がサチの口をふさぐ。丹下「放っといてやれ。あの凄まじい戦いを闘い抜いたんだ
奴だって安らぎが欲しい所さ」サチ「不倫ね」キノコ(ドヤ街の子供)「ちぇっ
違うよ安らぎ、安らぎだってさ」サチ「何さ安らぎって」キノコ「えーっと」
丹下「とにかくわしらは先に帰って宴会の支度をしといてやろうじゃねえか
おいしい物をうんと買っていってな」サチ「あらシュークリームもそん中に入ってる?」
丹下「もちろん!」子供達「うわーい!」丹下「静かに静かに!さ」
紀子(雑貨屋の娘でジョーに片想いをしている)が葉子とジョーをボーと見ている。
西「さ、紀子はん」紀子「ええ..」去っていく仲間。
ジョー「カーロスと言い、力石と言いこの小っちゃな四角いジャングルで
2度までも俺は芯から燃え尽くす事が出来た。もしあんたが居なかったら
こうはいかなかった。有難うよ、心から礼を言うぜ」見つめあい、去るジョー。
葉子「あ、待って矢吹君!私の車で泪橋まで送るわ!矢吹君!」去る葉子
ロバート「さあカーロス我々も帰ろう、懐かしのベネズエラへ!
2人の邪魔をしてはと矢吹にさよならを言えなかったのは残念だがね」
カーロス「いや私は残念では無い。ジョーヤブキは今では私の親友だ。
親友の間にサヨナラはいらない。いつでも私の心の中にいるのだから。
ナイスボーイ、グッドラック、ジョー!」去る2人。
〜ドヤ街、泪橋でジョーを待つ仲間〜
ぬすみ食いをしようとするキノコ。サチ「こら!ダメよジョーが帰って来てから
食べんの!」キノコ「そんな事言ったってジョー兄いは少し遅すぎるよ」
紀子「そうね少し遅すぎるわ」西「おっちゃん、ワイ車で様子見て来まひょか」
サチ「あっ車だ!きっとジョーだよ!おいジョー!はあ?」葉子「こんばんは」
西「お嬢さん!あんたお1人だけでっか?」葉子「彼は旅に出ました..
私止めたんですが行ってしまいました。そしてこれを、これを預かってきました」
手紙を渡す。手紙「おっちゃん俺はまた旅に出ます。理由はこれといって無いんだけど
ただ何となくそんな気分になっちまったんだ。サチ、キノコ、トン吉、太郎、ヒョロ松
皆小汚ねえがそれぞれ可愛くて傑作だったぜ。元気でな。それから西、紀ちゃんよ。
早く結婚しちまえ」西「ジョー、なななな何いうとんやあいつは」うつむく紀子。
手紙「それにおっちゃんよ、酒癖の悪い片目のご老体よ(読んでる丹下から涙が)」
ジョー「色々迷惑かけたけどよ、それはお互い様って事にしとくぜ。ただたった1つ
気になるのはおっちゃんが俺に期待をして世界を目指してくれって言った
事なんだ。悪いが俺にはどうも世界チャンピオンってのはピンと来ねえんだ。
まあガラじゃねえって訳だ。すまねえ、勘弁してくれよな」
手紙を落として泣く丹下。見下ろす葉子。皆涙を出している。
ジョー「じゃ皆、ちょいとおいら、サヨナラするぜ。縁があったらまた会おうぜ
グッバイ!あばよ!さよなら!」手紙をたたむ丹下、外へ出るサチ。
サチ「ジョーー!!ジョー!そ、そんなのないよあたいに黙って行っちゃうなんて
そんなの、そんなの、うわーー!」キノコがサチのゲタを持っていくキノコ「サチ」
サチ「嫌よ!」手をふりはらう。泣き出すキノコ。皆泣き出す。
太郎「ちきしょうちきしょうジョー兄いは何だって行っちまったんだよ」
ヒョロ松「そうだよ何だって行っちまったんだよ」
トン吉「何だって行っちまったんだよ、ジョー!」
葉子「矢吹君..」 丹下「あいつって奴は..(涙をふく)」
葉子「矢吹君はきっと生まれた時からの風来坊なのよ、
それが何かの間違いで私達の側に少し居ただけなんだわ。」
丹下「いや、奴はすぐ帰ってくるさ。強がって格好の良い事言ってるが
本当は寂しがり屋の照れ屋のとんでもねえ泣き虫だって事は
わしが1番よく知っとるんだ。奴は帰って来る。またこの泪橋に帰ってくるとも
帰って来ない事があってたまるかい。きっと帰って来る、帰って来るって。
いや絶対帰って来るよ(皆が顔を上げる)風が吹く時は風に乗って、
日が沈む時は太陽を背に受けてな、奴は帰って来る!矢吹丈って男が精一杯
今日という日を生きて巡る明日が有る限り、奴があしたのジョーで有る限りはな!」
どこかの駅の土手、サイレンが鳴り走って柵をジャンプするジョーが出て
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