エスパー魔美(テレビ版)最終回
藤子F不二夫作、エスパー魔美のテレビ版最終回です。
マンガ版は「パパの絵、最高!」が最終回で、テレビオリジナル。

〜最終回「動き出した時間」本編 パパの部屋〜
砂時計が流れ落ちる描写、白いキャンパス。ぼーっとしてるパパ。
魔美「パパ、パパ」 パパ「ん?」魔美が見ている。
魔美「どうしたの、ぼんやりしちゃって!」パパ「ん、ボンヤリしてたか」
魔美「そうよ。入って来たのも分からないんだもの」
パパ「そうか、すまん」 魔美、白いキャンバスを見付ける。
魔美「あっ、それ新作に取りかかるんでしょう?今度はどんなポーズでいく?
(服をぬぎだす)今月またしてもピンチなのよね。私ってホントどうしてこう
お金が身に付かないのかなあ。時々自分でも情けなくなっちゃうんだ。」
パパ「魔美」 魔美「ん?」 パパ「そのな..連作少女はしばらく中止だ」
魔美「そう..え〜!!」 パパ「当分魔美にモデルを頼む事は無くなってしまった」
魔美「ど、ど、どうして!?」 パパ「いや、別の事を始めなくては
ならなくなったんだよ。」 魔美「え〜...ショック」(座り込む)
パパ「つまりその..パパは..(振り向くと魔美が出ていってしまった後)
どうも切り出し難いなあ。(砂時計の砂が全部落ちる)しかし..」

〜魔美の部屋〜
魔美「失業してしまった..これは死活問題よね」コンポコがなぐさめる
魔美「なぐさめてくれるのは有り難いんだけど、あんただって今までの
様には油あげ食べられなくなっちゃう訳よ。」コンポコ、ギクリとなり泣く
魔美「やっと事態の重大さを分かったみたいね、大丈夫よあんたを
餓えさせたりしないから」喜ぶコンポコ。
〜外に出て歩く魔美とコンポコ〜
魔美「でも他のアルバイトって言っても、なかなか中学生に出来る仕事なんて
見つから無いのよね。どうせなら夢の有る仕事が良いんだけどな。(保育園を見る)
例えば、保母さん。うふふ」(保母に見つかる)保母「何か?何かご用かしら?」
魔美「いえ、別にご用ってほどのものじゃ..」保母「ああ、見学したいの?」
魔美「お願い出来ますか?」保母「OK、じゃ、子供達の気をそらさないようにね」

〜保育園のお絵描き時間、後に立つ魔美〜
絵を見て魔美(お父さんの顔ね)保母「ハイ皆出来ましたか?」子供「ハーイ!」
保母「じゃ、先生の所に持って来て下さい」子供「ハーイ!!」魔美「可愛い〜」
数人、魔美の横のコンポコを珍しそうに見て、追い掛ける。魔美と保母は子供の絵を見る
保母「感じたままのお父さんの絵を描いてごらんなさいって言ったんだけど、
皆様々でしょう」 魔美「そうですね、色んな顔が有る」 保母「顔の作りも
そうだけど、顔の大きさが色々有るでしょう?」 魔美「大きさ?」
保母「顔の大きさはね何ていうかなあ、お父さんとの距離なのよね」魔美「え?」
保母「大きければおっきい程近い存在で、小さいのはちょっと遠い存在かな?」
魔美「へえーそうなんだー」保母「一概には言えないけど、ま、大体当ってると
思うわよ」魔美「へえ面白いですねえ」コンポコが窓の外から助けを求めるが無視
〜歩道〜
魔美、コンポコを近くしたり遠くしたりしながら「大きい顔、小さい顔」
魔美「絵って不思議よね、無意識の内にモデルとの距離まで表現してるんだもの」
〜高畑の家〜
高畑「へえ〜なるほどね」 魔美「ね、絵ってやっぱり素敵よね」
高畑「邪心が無い子供達だからこそ出来る表現かもね。」
魔美「あらじゃあうちのパパの絵は?」高畑「どうかな佐倉十郎氏は画家だから」
魔美「プロだから?」高畑「ああ、また違った見方をしてるんだろうしねえ」
魔美「違った見方?」高畑「ん、何?」魔美が指でレンズの囲いを作る。
魔美「あたしが高畑さんの絵を描くとしたら、どの位の大きさだと思う?」
高畑「え、そんなの分かんないよ」 魔美「良いから言ってみて」
高畑「こん位かな」手でボールを持つ位。魔美「あらそんなに小さいの?」
高畑「じゃ、こん位かな(少し手を広げる)」魔美「まだそんなもの?」
高畑「じゃ、えいこの位かなー!ダハハハハハー!(大の字になって立つ)」
魔美「うぬぼれてる〜。こういう人は放っといて、さ、帰ろう」高畑ガッカリ
高畑「じゃ、どの位なんだよ!?」魔美「そうねえ、地球をひと回りして、
足りない位かな(テレポーテーションする)」高畑「..地球をひと回り...
(照れながら)こりゃ参ったな、デヘヘヘヘ(1人でじたばたする)」
空を飛びながら家に帰る魔美。

〜自宅夜 台所〜
ママ「それじゃまだ話してないんですか」パパ「いやなかなか切り出し難くてね」
ママ「早く話してあげないとつらくなるだけよ」パパ「ん..分かってるんだけどね」
魔美「ただいま」パパ「あ?」ママ「じゃ、お願いしますね」パパ「あ、ああ」
魔美が入って来る「ああ、お腹すちゃった〜!」パパ「ああお帰り(新聞を見る)」
ママ「パパ」パパ「分かってるよ(新聞閉じる)」魔美「何、どうしたの?」
パパ「いや、実は..」魔美「あっ、そうそう今日おっかしかったんだ〜!」
パパ「ほう、何かね?」魔美「ほらうちの中学に社会の村田先生っているでしょう」
パパ「ああ、うんうん」魔美「あの先生ったらねいつも難しい顔して(顔真似する)」
パパ「こらこらもうじらすんじゃ無いよ〜」魔美「あの先生ったらね〜」
ママ(何かを切りつつ)「魔美ちゃん、その前にパパからも大切なお話が有るのよ」
魔美「あ、何?」パパ「ああ、それだけどね..その」(画面はビルの間を移動する魔美)
ママ「パパの夢、魔美ちゃんも知ってるでしょ?」魔美「うん。ひいおばあちゃんの
ふる里のフランスに留学する事でしょ」ママ「それが実現しそうなの!」
魔美「本当?パパ」 パパ「ああ、あっちで個展を開いてみないかというお誘いが
有ってね」魔美「スッゴイじゃない!」(画面が家の中に戻る)パパ「うん、それで
そのまましばらくあっちで勉強してこようと思うんだ」魔美「勉強?」パパ「ああパパも
まだまだ発展途上人だ画家としてもっともっと勉強したい事は山程有る」
魔美「それってどの位?」パパ「1年になるか2年になるか」魔美「ええ?そんなに?」
パパ「勝手な事を言ってすまないけど」魔美「ねえ、ママは?」ママ「ママにも
こっちに仕事が有るでしょう、それに今度うちの社で雑誌を出す事になったの。
ママもそのスタッフに入ってしまったからどうしても辞められないのよ」
魔美「ふうん」パパ「賛成してくれないか」魔美「あたしが反対出来る事じゃ
無いもの」パパ「そうか賛成してくれるか」魔美「うん」コンポコがパパの足で泣く
コンポコの頭をなでるパパ「正直魔美達を置いて一人で留学なんてとてもツラいん
だけど」魔美「でも行きたいんでしょ?」パパ「うん」

〜真夜中のマンションを飛ぶ魔美〜
一瞬パパがフランスで風に吹かれてる画像。マンションの淵に座り込む魔美。
魔美「パパが遠くに行っちゃう..遠くに行っちゃう。」白いカンバスを見つめるパパ
魔美「もうパパは私を描いてくれなくなっちゃうのね..」

〜朝 通学する魔美と高畑〜
高畑「やあおはよう!」魔美「おはよ」高畑「ん?」魔美「何?」
高畑「ああ、放課後試合が有るんだけどさ、見にこない?」魔美「うんいいわよ」
高畑「今日の試合、ピッチャーやる事になってるんだ」魔美「まあすごい」
高畑「いや、そうでも無いんだ。もうリーグ最下位が決まってるもんで皆で交代で
ピッチャーやる事になったんだ。ほとんどヤケさ」魔美「ふふ」高畑「?」
〜教室〜
メガネの子「へえ〜魔美のおやじさん、フランスに留学かあ〜!」
幸子「格好良いねー!」竹長「立派だなあこれからまた勉強されるなんて」
メガネ「ホントホント。あたしなんか自慢じゃ無いけど学校卒業したら遊ぶ事しか
考えて無いもんね」幸子「同感!あ、ねえねえじゃあパリなんかも行っちゃう訳?」
魔美「うん」メガネ「わっ!良いんだ〜!OHパッリ〜!おっしゃれなカッフェーで
お茶を飲み、シャンゼリーゼで御買い物♪セーヌのほとりを散歩すれば素敵な彼が
ボンジュール、マドモアゼル?ああ〜!それってすっごーくトレビア〜ンだわ〜」
幸子「ちょっとちょっと桃井さん?」メガネ「あ...ちょっとパリまでイッてました」
幸子と竹長「お帰り。」竹長「でもさ、やっぱり目的を持って生きてる人って
違うんだな」幸子とメガネ「うん」メガネ「ちょっと寂しくなっちゃうね?」
幸子「魔美平気?」魔美「大丈夫よ」メガネ「そうね!あたしらが付いてるもん!」
幸子とメガネ「チャチャチャッ!イエーイ!(手をたたいてピース)」
魔美「あはっありがと!期待してるわ。」魔美を真剣に見てる高畑。
〜放課後、グランド〜
ピッチャーをする高畑。「ボール!」高畑「ふう..ん?」魔美が草むらに居る
魔美(何だか、止まっていた時間が動きだしたみたい)
また投げる高畑だがかなりはずして投げてしまう。竹長「おーい高畑、
そろそろ変わろうか?」高畑「ああ、まだまだ。ドンマイドンマイ。あっ」
魔美がいない。高畑「竹長変わって!」ええっ、おいどこに行くんだよーとヤジ
高畑「ねえちょっと待ってよ!あああ〜(草を滑って落ちる)」
魔美「高畑さん、良いの、試合?」高畑「感じたんだよ僕も。」魔美「え?」
高畑「君の思考派のベルをね」魔美「ごめんね高畑さん!」テレポートする魔美
高畑「ああっ..」立ち上がって草を払う。

〜家、パパの部屋〜
絵の具と筆を整理しているパパ「ポポポ〜汽車ポッポ〜ん?魔美公か?」
魔美、無視して自分の部屋へ。コンポコを抱き「あたしは大丈夫よ、ホント」
ベルが鳴り、玄関の扉を開ける魔美「あら」高畑「やあ」再び魔美の部屋へ

〜魔美の部屋、真剣に絵を見る高畑にお茶を持って来る魔美〜
魔美「さっきはごめんなさい。ん?」高畑「ふ〜む、他の君の絵を見せて
くれない?」魔美「え?良いけど?」 絵を並べて見る高畑。
魔美「一体、何なの?」高畑「本当に良い絵だね」魔美「そう言ってくれると
嬉しいわ」高畑「僕、絵の事は分からないけど」魔美「アラ(ガッカリ)」
高畑「いやそういう意味じゃ無くて..感じたままを言っていいかな」魔美「どうぞ」
高畑「うん、佐倉十朗氏は魔美君の様々なポーズを様々な角度から描いている」
魔美「うんうん」高畑「魔美君が悩んだり、悲しんだり輝いていたり、色んな時の
魔美君をとても暖かい眼差しで描いていると思うんだ」魔美「そうね」
高畑「画家という立場でちょっと距離を置いてね。」魔美「なるほど..でも、
高畑さんも進歩したわね」高畑「ん?」魔美「今までは恥ずかしがって、
あたしの絵をちゃんと見てくれなかったじゃない」高畑「!忘れてました」赤くなる
夕方、どこかの歩道で。高畑「フランスは遠いけど、ここから少し距離が伸びた
だけなんじゃ無いかな。君のパパはフランスの空の下で君の絵をイメージ
するんだと思うよ。」魔美「有難う、高畑さん。」

〜パパの部屋 片付けをする家族、最後の夕食〜
魔美「パパこれは?」パパ「それは置いてくやつだ」魔美「はあい、はいママこれも」
夕食。パパ「うひょ〜!松茸御飯では無いか!」魔美「良い香り!」ママ「秋の
の香りでしょ、土瓶蒸しも有るわよ..パパだけね」魔美「あら。パパだけずるい!」
ママ「さ冷めない内に食べましょ」家族「いただきま〜す!」
魔美「ママ!これからは私を頼りにしてよね。パパがいない間この家を守るのは
私なんだから!」パパ「こら、マミ公がそんな事言うとかえって心配するだろ」
ママ「ホント」魔美「あら、失礼しちゃう!(笑)..おいしいね」パパ「ああ」
夜中、涙をながして寝る魔美。翌朝高畑がタクシーに荷物はこびを手伝っている
ママ「そろそろ行きましょ」魔美「ママ!パパのパスポートが無いんですって」
ママ「あら忘れると困るからって私にあずけたでしょう」赤くなるパパ「ダハハ」
魔美「なんだ」ママ「さあ急がないと」家を感慨深く見てからタクシーに乗るパパ

〜タクシーで出発 魔美に思考派ベル〜
タクシー内、ママ「魔美ちゃん、どうしたの?」魔美に危険思考派ベルが。
パパ「マミ公」魔美「何でも無いわ」無視してタクシーへ乗る魔美、高畑もいる
渋滞で止まるタクシー。パパ「意外と混んでるな」ずっと思念派ベルが鳴っている
魔美「すいません!降ろして下さい!用事を思い出したの」降りる魔美。
ママ「何言うのこんな時に」魔美「ごめんなさい後から電車で追い掛けるから
先に行って」高畑「あ、僕も行って来ます」降りる高畑。走る2人。
パパ「やれやれ魔美もあのくせだけは直さんとな」ママ「ほんと」
魔美「こんな時に事件なんて最悪!」高畑「とにかく急ごう」物陰に入り
テレポートする魔美達。空港。パパ「遅いなマミ公のやつ」ママ「ええ」
後輩達「佐倉先生!見送りに来ました!」パパ「おお来てくれたのか」

〜事件現場〜
高畑「どうしたんですか?」ヤジ馬「銀行強盗の奴が警官に追い掛けられてあそこに
立てこもってやがんのよ」高畑「どうも。(魔美へ)ここは警官に任せて僕らは空港に
行こうよ」魔美「どうしてもっと早くに来なかったんだろう」母親から思考派ベル。
ヤジ馬「まったくとんでもねえ奴だ人質を取りやがって」高畑「子供を?」
警官「お前は包囲されているすみやかに人質を解放して出てきなさい!」うるせーっ
と声がする。警官「おい、催涙ガス」部下「ハイ」高畑「魔美君!」

空港。パパ「いいなくれぐれも魔美によろしく言ってくれよ。それからそれから」
ママ「ええ魔美にはちゃんと伝えますからもう行かないと本当に乗り遅れますよ」
後輩「先生が行かないと僕も帰れないんだよなあ」パパ「ハハハそうかそうか
じゃ行ってくるよ」ママ「行ってらっしゃい!」見送り「行ってらしゃーい!」

事件場、立てこもる犯人の所にテレポートする魔美。人質をテレポーテーションガン
で外に逃がし、テレキネシスで非常用ホースを使って犯人をぐるぐる巻きにする。
犯人「おわあー」窓から飛び出させ、警官の前にテレキネシスで出し、
廃屋のペンキを次々とかける。子供「ママー」母「ユキちゃん!」抱き合う
ペンキまみれの犯人、警官ににらまれてる。その上の空をテレポートする魔美達。

〜空でパパを見送る〜
飛行機が行くのを空から見る魔美とコンポコと高畑「間に合わなかったね」
魔美「良いのよもう会えないんじゃ無いんだもの、行ってらっしゃい!」
高畑「パパの夢を乗せて飛行機は空の彼方へ去っていった..か。ねえ君の夢は?」
魔美「私の?..笑うから言わない!」高畑「ふうん..」
魔美(どうか、皆、幸せに!)ハートブローチにキスをする魔美。

家、魔美の机に紙が有る。手紙「魔美へパパのいちばんの宝物だ君に預けておく
大きな顔のパパより」手紙をどけると「ほしぐみさくらまみ」と書いたパパの
大きい顔のクレヨン画が有る。魔美「あはっずっと大事に取っておいてくれたんだ」
飛行機のパパ(子供魔美「ハイパパ」絵を見せる魔美「おっパパにくれるのか?」)

現実。一所懸命に包丁で料理する魔美。ママ「そうじゃないでしょ、あああ〜」
コンポコが笑っている。魔美「何笑ってんの」 ピッチャーをする高畑「えい!」
審判「ストライクバッターアウト!」魔美「やったー!」応援する魔美、幸子、メガネ
に駆け付け「イエイ、イエイ、イエーイ!」と喜ぶ高畑。竹長「おい高畑、まだ
終わってないぞー!」外野で照れてる高畑「いやあまいったなあ」竹長「やれやれ」

場面変わり家でキャンパスの布を取る魔美。何度もうろついて白いカンバスを見て
魔美、最後にどこかにテレポーテーションして消える。

終わり-戻る